ウッズが復活した。09年BMW選手権以来、2年半ぶりに米ツアーで勝った。得意のベイヒルで開催されたアーノルド・パーマー招待。2位マクダウエルに1打差をつけて首位で迎えた最終日、70をマークして5打差の完勝。「とても、うれしい」。不倫騒動後、初の米ツアー制覇にホッとしたような笑みがこぼれた。
王者のゴルフだった。前半は攻めて4バーディーを奪ってラッシュをかけ、2010年全米オープン王者マクダウエルとの差を4打に広げた。すると、そこからは一転、逃げ切り態勢に入る。無理をしない。手前から攻め、ピンを狙わずグリーン中央に目標を取った。
「とてもタフな1日だった。コース条件も、相手も厳しかった。でも、今日のような日はみんな多くのバーディーは取れない。それを利用しなければならないと感じたんだ」。
ゴルフは自分との戦い。同じ組で回る人の1打に一喜一憂していては、自分のプレーを貫くことができず、リズムも崩れやすい。しかし、優勝争いの土壇場では相手を見て戦うことも求められる。相手の調子、ストローク差によって、コースの攻め方を変えた方が、勝つ確率が上がるからだ。
簡単に言えば「大量リードしている最終日の終盤は、無理して攻める必要がない」ということ。だが、これが難しい。グリーン中央を狙うにしても正確なショットが必要だし、「逃げ切りたい」という意思がある中で目の前の1打に集中する”心の強さ”も求められるからだ。
今年1月の米ツアー、ファーマーズ・インシュランスオープンで、その難しさを象徴するシーンがあった。最終日、3打リードして最終18番パー5に来たのはツアー未勝利のカイル・スタンリーだった。第1打は左ラフ。距離的には2オンも可能だったが、グリーン手前の池を避けて、刻む判断を下した。しかし、100 ヤード 足らずの第3打がバックスピンでグリーンの傾斜を転がり、池へ…。第5打もグリーン奥へと外し、アプローチを1メートルほどに寄せたものの、ダブルボギーパットを入れることができなかった。安全策を取ったはずが、失敗に終わり、痛恨の「8」。結局、スタンリーはスネデカーとのプレーオフに敗れて勝利を逃した。
「ウッズとスタンリーでは格が違う」と、思う人もいるかもしれない。しかし、同じ人間。考えることはそれほど変わらない。だとすれば、成功か失敗かを最後に分けるのは、やはり「雑念を捨てる集中力と確かな技術」だ。
アーノルド・パーマー招待の最終日、ウッズは15番でピンチを迎えていた。4メートルほどのパーパットが残っていた。マクダウエルとの差は4打あったが、勝負所と見極めて、集中力を高めた。「今年のツアーでは何度か逆転劇を見てきた。残り3ホールで3打差なら何が起こるか分からない。だけど、4打差ならちょっと違う」。そして、その重要なパットを見事沈めた。
目の当たりにしたマクダウエルは続く16番でバーディーチャンスを外し、17番でもボギーをたたき万事休す。一方、ウッズは17番でも、18番でも右端のピンを狙わず、正確にグリーン真ん中を捕らえて、逃げ切った。対戦相手と試合状況を把握、分析しながら、勝つためにより確実な手を打つ…。その姿に、強いウッズが戻ってきたと感じずにはいられなかった。
不倫騒動から復活を目指していた過程では、左アキレス腱痛にも何度か悩まされた。勝てないよりも辛かったという。「ケガをすれば、練習ができないんだからね。練習ができなければ、スイング改造もできないし、パットの練習もできない。去年は厳しい1年だった」。
しかし、傷が癒えた昨年11月オーストラリア・オープンで3位に入り「いい兆しが見えた」。今年も何度か優勝争いに絡んで、徐々に手応えもつかんでいた。「いい調整ができて、忍耐強く練習を続けられたから、ここ(優勝会見の席)にいるんだ」。尾崎将司が「心技体じゃない。重要な順番は体技心だ」と話していたが、やはりアスリートにとっては体が資本。ウッズも体調が良くなったからこそ、本来の技と、強い心もよみがえった。
楽しみになってきたのは、4月5日から始まるマスターズ。米ツアー通算勝利数歴代2位73勝のジャック・ニクラウスに並ぶまで、あと1勝に迫ったことに「いいことだね」と言ったあと、ウッズは大一番へ力を込めた。
「いいショットを打てたのは、オーガスタに向けてとてもいいサインだ。ジャックと並ぶより、もう1つグリーンジャケットを得ることを楽しみにしている。今年は4大メジャーにピークを合わせたい」。
世界ランク1位を争うルーク・ドナルドや、ロリー・マキロイ、特別招待枠で4年連続出場が決まった石川遼に、昨年のローアマ松山英樹…。大舞台には役者がそろうが、ゴルフ界の”センター”に最もふさわしいのはタイガー・ウッズ。寝不足になる日が、待ち遠しくなってきた。
2012年
2011年
2010年
2009年

■選手別登場回一覧(五十音順)
あ行
有村智恵(第18回)、
石川遼(第71回、第69回、第63回、第62回、第55回、第53回、第48回、第46回、第45回、第42回、第36回、第32回、第29回、第25回、第21回、第19回、第17回、第11回、第9回、第5回、第4回)、
池田勇太(第70回、第63回、第46回、第26回、第17回)、
伊藤誠道(第6回)、今井克宗(第24回)、今田竜二(第54回)、
上田桃子(第28回、第23回、第7回、第3回)、上平栄道(第65回)、
尾崎将司(第43回)
か行
柏原明日架(第60回)、片山晋呉(第12回)、河井博大(第58回)、
木戸愛(第57回)、金庚泰(第46回)、小泉洋人(第52回)、
古閑美保(第66回、第16回)、近藤共弘(第56回)
た行
タイガー・ウッズ(第72回、第39回)、高山忠洋(第61回)、
竹村真琴(第50回、第8回)、田中秀道(第14回)、谷口徹(第34回)
な行
中園美香(第41回)
は行
深堀圭一郎(第30回)、藤田寛之(第64回、第35回、第31回)、
不動裕理(第33回)、星野英正(第15回)
ま行
松山英樹(第68回、丸山茂樹(第67回、第20回)、
丸山大輔(第10回)、
宮里藍(第47回、第38回、第27回、第2回、第1回)、
諸見里しのぶ(第49回、第22回、第7回)
ら行
リッキー・ファウラー(第25回)、ロリー・マキロイ(第59回)
その他
2009年日本オープンゴルフ選手権競技(第13回)